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理想的な「幸福物質」の条件

 ここでの幸福の定義は、快が十分に多く、不快が十分に少ない状態である。一時的ではなく長期的に「幸福」になれるものの性質を考える。

 幸福になる方法は、前述のとおり快を増やす、不快を減らす、快と感じる領域を広くするの3つである。快を感じる領域を広くすることは自身の認識の変化によってしか行えないため、幸福になる物質というものを考える場合、快を増やす、または不快を減らす物質を考えることになる。

 これまで不快刺激をなくす物質に関しては多くの研究がなされてきた。快・不快は刺激によってもたらされるものであるから、(不快)刺激をなくすものには基本的に中毒性が生じないためであろう(ここで言う中毒とはその物質に夢中になることである)。

 では快を増やす方向に作用する物質について、長期的に幸福になる物質(幸福物質)であり続けられるものが存在するとしたら、その性質はどのようなものなのであろうか。

 

 幸福物質が幸福を増やす物質であり続けるためには、快が減弱しないこと、不快が増大しないことが必要である。より具体的に性質を述べると次のようなものになる。

1.得られる快に限度があること

 ある物質が増えるごとに際限なく快が得られるようになると、その物質を摂取する行為ばかり行うようになる。当人の健康維持や社会的に好ましいとされている行動を疎かにすれば、結局のところ不快が多くなる。また、刺激とは日常との差異であるから、常に快刺激を受け取り続けていればその快刺激を受け取っている状態が日常となり、快を受け取るためのハードルが高くなる(耐性が付く)。

2.耐性が十分に弱いこと

 耐性が付くということは同じ刺激でも同じ快が得られないということ、すなわち快が減弱するということであるし、以前と同様の快を得るためにその物質を増やすことは、その物質を手に入れるコストと副作用の可能性を増やすこと、すなわち不快が増えることである。

 依存性は上2つの条件をクリアしており、かつ常に容易にそれが入手できる状況があるなら存在してもよい。


 この意味での幸福物質は既に存在している。特に飲食物は理想的な幸福物質である。満腹以上に食せば快は得られなくなるため1.の条件をクリアしているし、味蕾が変化しない限り刺激は変化しないため2.の条件をクリアしている。

 部分的に幸福物質といえるのは金銭である。金銭によって得られる快刺激には多くの種類があるため比較的耐性は付きにくいと思われる。つまり2.の条件をクリアしている。また、得られる金銭には限度があるため、金銭を用いることによって得られる快刺激は1.に示した性質を持つ。金銭というシステムを通じることで、金銭によって得られる快刺激が幸福物質としての性質を帯びるようになると言い換えることもできる。ただその当人に見合わない多額の金銭を得た場合、金銭は1.の条件を満たさなくなるため幸福物質とは言えなくなる。

 短期的には快をもたらす物質であるが幸福物質としての性質を持てないものの代表的な例は覚せい剤である。覚せい剤は中枢神経に働きかけ直接快刺激をもたらすが、1.の条件も2.の条件も満たさない。

 

 多くの覚せい剤使用者や当人に見合わない多額の金銭を得た者の破滅を鑑みるに、理性によって快楽発生物質を調節すればよいという考えは無謀であると言えるだろう。快刺激タイプの幸福物質は、自然に1.の条件と2.の条件が満たされるようなものでなくてはならない。